
額(おでこ)は顔の上1/3を占める広いパーツであり、その形状は「第一印象」に大きく影響すると言われています。特に、丸みのある額は「女性らしさ」や「若々しい印象」を与えるため、多くの方が理想とするポイントです。
今回は、そんな理想的な額のラインを骨格から形成する「前頭洞骨切り術(ぜんとうどうこつきりじゅつ)」について、頭蓋顎顔面外科専門医・坂本医師がわかりやすく解説します。
額が与えるお顔の印象の違い
おでこの骨格が平坦だったり、眉上の骨が張り出していると、額がゴツゴツとした印象になり、「男性的」「強い性格」といった印象を与えることがあります。一方で、丸みのあるおでこは柔らかく上品な雰囲気を生み出し、「女性らしさ」や「優しさ」といった印象につながります。

近年では、丸みのある額は“女性の美しさを象徴するパーツ”として注目されており、ヒアルロン酸や脂肪注入などで丸みを形成する方も増えています。しかし、「骨格そのものを整えたい」「眉上の出っ張りを引っ込めたい」といったお悩みには、「前頭洞骨切り術」が適しています。最近では、「前額セットバック」とも呼ばれています。
前頭洞骨切り術とは
「前頭洞」とは、眉の上あたりにある空洞で、この部分の骨が前に張り出していると、額がゴツゴツした印象になってしまいます。前頭洞骨切り術では、この張り出した骨をいったん外し、奥の骨(前頭部の土台)を削って後ろに下げ、必要に応じて外した骨や人工セメント(ハイドロキシアパタイト)を使って、額のラインをなめらかに整えます。この手術では、髪の生え際や頭皮内を切開して行います。切開部は髪の毛に隠れるため、傷跡が目立ちにくいのが特徴です。

「脳に近いエリア」を扱うため、とても慎重な技術が必要です。骨の構造だけでなく、神経や脳の位置にも十分な理解が求められるため、手術を行える医師や施設は限られています。中でも、額のすぐ下を通る「眼窩上神経」は絶対に傷つけてはいけないため、細心の注意が必要です。
脂肪注入やヒアルロン酸で形成する額の違い
ヒアルロン酸や脂肪注入は、額に丸みを出すための比較的手軽な方法です。ヒアルロン酸は仕上がりがすぐにわかり、ダウンタイムが短いのがメリットですが、半年〜1年ほどで吸収されるため、定期的なメンテナンスが必要になります。脂肪注入は自身の脂肪を使うため、自然な質感で半永久的な効果が期待できます。ただし、注入した脂肪の一部が吸収されることもあり、脂肪の生着に個人差があります。
これらの注入治療は“膨らませる”方法であるため、眉骨の出っ張りや額のゴツゴツ感をごまかすには限界があります。骨格自体に凹凸がある状態で無理に膨らませると、コブダイのように額だけ不自然に出っ張ってしまうことも。そのため、額の出っ張りを引っ込めたい方や、骨の形を根本から整えたい方には、「前頭洞骨切り術」をおすすめしています。

前頭洞骨切り術の症例
当院で「前頭洞骨切り術」を受けて、顔全体の印象が柔らかくなった症例を紹介します。
こちらの患者様は、前頭部のゴツゴツ感と眉骨が気になるということで手術を希望されました。前頭洞骨切り術でおでこ全体を下げて、眉骨も削りました。どうしても削れない、でこぼこした部分を骨セメントで調整して、どの角度も自然なラインで、綺麗な丸みのおでこになりました。

こちらの患者様は、女性らしくお顔の印象を骨格から変えたいという希望があり、前頭洞骨切り術を希望されました。脂肪注入などで大きくするのではなく、小さくして丸みを出すことで、おでこの主張が少なくなりお顔の印象が柔らかくなりました。


術後の腫れ・注意点について
Q. 手術後はどれくらい腫れますか?
A. 腫れのピークは手術の2〜3日目で、1週間ほどで徐々に落ち着いてきます。額から下に重力で腫れが移動するため、目の周囲が腫れることがありますが、自然に回復しますのでご安心ください。
Q. 洗髪はいつからできますか?
A. 洗髪は手術の翌日から可能です。シャンプー後はタオルで優しく押さえるようにして水分を拭き取り、しっかり乾燥させてください。
Q. 術後に気をつけることはありますか?
A. 特に注意が必要なのは「鼻を強くかむこと」です。骨が固定される前に内圧がかかると、骨のずれや感染リスクが高まります。また、術後1週間ほどで鼻から液体(体液や血)が出てくることがありますが、この際も強くかまず、清潔な綿球やティッシュでやさしく対応してください。出血が10分以上続く場合は、すぐに医療機関へご連絡ください。
前頭洞骨切り術は、注入では解決できない額の骨格の悩みを、根本から改善できる確かな方法です。「額の丸みを整えたい」「骨の出っ張りを引っ込めたい」と感じている方は、ぜひこの機会に専門医によるカウンセリングをご予約ください。